VCから2億円調達。盛り上がる業界、寄せられる期待
Meshはダークストア型のクイックコマース事業を立ち上げるために2億円を調達したスタートアップでした。

ダークストア型のクイックコマースとは、このような感じで倉庫を持ち、 ユーザーがアプリで注文をすると30分以内に商品を玄関まで届けてくれるというサービスです。
倉庫から発送とすることで、①賃料を抑えられる、②内装費を抑えられる、③レジ打ちなどの人員が不要となり人件費を抑えられる、というコストメリットがあり、デリバリーにありがちな高い価格ではなく、一般的なスーパーの小売価格で商品を販売できる(送料は別途徴収)、という大きな強みがありました。
事実、小売価格のデリバリーはユーザーに刺さり、コロナ禍による特需も相まって、当時海外では同様のスタートアップが数多く立ち上がっていました。当時の勢いは凄まじく、例えば米国のGopuffの評価額は2020年10月に39億ドル(約4,000億円)、2021年3月に89億ドル(約9,800億円)、同年7月に150億ドル(約1.65兆円)となり、約8ヶ月で3.8倍へ上昇しました。
クイックコマースの主戦場であるヨーロッパでは、ドイツのGorillasという創業1年以内にユニコーンになる会社が出てくるなど、とにかくすごい盛り上がりでした。
代表の私はフィンランド生まれ・育ちということもあり、人脈を活かして欧州にて深く入り込んだリサーチを行った結果、日本でも勝機はあると考え、2億円の資金調達を行いました。
ちなみにですが、私は新卒で入ったDeNAでタクシー配車GOの事業開発・企画に携わっていたものの、起業も初めてでシリアルアントレプレナーではありませんでした。それでもMeshのラウンドには複数のVCが手を挙げ、取り合いのような状況になりました。当時、シードでの調達額は3,000万〜5,000万円が相場でしたが、Meshはその4倍以上にあたる2億円を調達しました。また、日本経済新聞をはじめとした様々なメディアに取り上げられました。それくらい、日本でもクイックコマースには強い期待が寄せられていました。
想像以上に泥臭かった事業立ち上げ
最初はみんな素人だった
ITスタートアップというと、凄腕エンジニアがコードを書き、まるで魔法のように事業が立ち上がる、そんなスマートなイメージを持たれる方が多いかもしれません。が、、現実はもっと泥臭いものでした。
そもそもMeshの社員は誰もスーパーマーケット事業に携わったことがありませんでした。なので、
- 「在庫管理はどのようにするの?」→「わからん!」
- 「商品はどこから仕入れるの?」→「わからん!」
- 「倉庫の物件はどうやって探せばいいの?」→「わからん!」
といった感じで、基本的なことさえ、右も左もわからない状態で事業立ち上げを行っていきました。
倉庫の通路幅さえ決められない
倉庫型のスーパーなんてものは当時の日本にはありませんでした。なので、倉庫内の通路の幅さえ決められませんでした。
- 「ピッキング時には人がカゴを持つのか?それともカートを使うのか?」
- 「カートは1台だけ通れればいいか?2台並列で通れるようにすべきか?」
- 「ピッキングと補充を同じ時間帯に行う場合、両者が同じ通路に入れるか?」
- 「通路が狭いと上段や下段のロケーションラベルや商品が見えにくくならないか?」
こうした問いが、ほかにも数え切れないほどありました。一見簡単そうなことでも一筋縄ではいかず、ひとつずつ考えては試し、事業の形にしていきました。
いつの間にかエキスパートに
今では通路幅で悩んでいたことも懐かしいですが、最終的には品揃え、商品管理、倉庫の環境・レイアウト、配達など、あらゆる観点で相当詳しくなりました。未知の領域でも本気で取り組めばエキスパートになれる、というのは我々の自信にもなりました。
そして物件も決まり、事業が一気に形になってきました。
冷蔵庫の搬入にはすごくひやひやしました。
商品を仕入れて棚に入れて、
オペレーションのデモを入念に行い、
良いUXを作るためにエンジニアが倉庫のオペレーションそのものも改善し、
Meshのアプリをアプリストアに公開し、
調達から1年、通路幅すら決められなかった私たちが、ついに事業開始まで漕ぎ着けることができました。
サービス開始。果たして注文は入るのか?
オペレーションの整備も入念に行い、サービス開始の周知も徹底して行いました。それでも絶対なんてものはなく、どれくらい注文が入るかわかりません。ましてやMeshは生鮮食品を扱っているので、注文が入らなかったら全て廃棄となり、損失も大きいです。そんな不安を抱えながら、Xで放ったポストがこちらでした。
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いざ始まってみると、そんな不安とは裏腹に初日から注文が入り続け、翌日には現場のオペレーション人員だけでは足りず、エンジニア陣が現場のヘルプに入るようになりました。これは嬉しい悲鳴でした。
「生鮮をデリバリーで買う訳がない」
「個体差がある生鮮食品を、品質にうるさい日本人の消費者がデリバリーで買うのはイメージが湧きませんね」
過去にとある投資家からこのような言葉を頂きました。それでもMeshでは、飲料やお菓子だけでなく、生鮮食品もしっかり買われていました。
注文が入らない心配はなくなったので、ここからはもうオペレーションをやり切り、サービスを改善していくことに一点集中です。エンジニア陣もオペレーションに入り、リアル(商品・ロジなど)と一体となったソフトウェアを日々磨き込んでいました。
サービス品質の効果も相まって、日に日に注文数は増えていきました。
我々にとってはサービスが良くなり、ユーザーが喜び、それが注文数やカート単価の向上に繋がっていくことがとても楽しく、やり甲斐となっていました。移動中でもずっと事業の話ばかりしており、駅のホームで突発的にミーティングが発生することもありました。
App Storeで4.8点獲得の大快挙!!
こうしたMeshのさまざまな取り組みがユーザー体験の良さに繋がり、App Storeでも4.8点と高い評点を獲得しました。4.8点を獲得しているアプリはなかなかなく、Meshチームの執念が表れている数字だと思います。
事業クローズ
広尾と恵比寿の単価の違いに打ちのめされた
事業は比較的順調に進んでいるように思えました。ところが数字を細かく見ていくうちに、そうとも言い切れない事実が少しずつ浮かび上がってきます。
私たちが都心でサービスを始めたのには理由がありました。未就学児を育てている & 比較的裕福な子育て世帯、その層が「スーパーに行っている余裕なんてない!」というバーニングニーズを抱え、また配達料を支払うことができるだろう、という仮説でした。まずはその層の購買行動を変えることでキャズムを乗り越え、サービスエリアを広げていく、それが我々の考えでした。
しかし、そんな都心であっても、広尾と恵比寿では客単価がまるで違いました。広尾では1回あたり5,000円のカート単価で週に何度も使ってくださるユーザーが多数いる一方、そのような購買行動は都心でも極めて限られた狭いエリアでしか起きていませんでした。そのため、都心の一部では成立してもそれ以外のエリアでは成立しないだろう、という結論にならざるを得ませんでした。
もうスーパーにはほとんど行かずMeshが生活のインフラになっているユーザーも数多くいたので、とても心苦しかったですが、我々は事業を閉じる決断をしました。
(補足)
日本にクイックコマースの市場はなかったと「我々は」考えていますが、これはネットスーパー(配達時間予約型)を否定するものではありません。ネットスーパーの市場は日本にあると思っていますし、我々は各社さまの挑戦を応援しています!
M&Aディールで評価されたこと
私も驚いたのですが、事業クローズを発表したその日に数社から私に連絡が入り、蓋を開けるとMeshを買収したいというお話でした。一社は全国規模の日本を代表する小売企業、一社は大手ECプラットフォーム企業、一社はスタートアップの雄でした。評価していただいたところは以下のような点でした:
App Storeで4.8点獲得するほどにUXがよかったこと
小売・EC系のアプリで、Meshは4.8点という突出して高い点数を保持していました。また、Meshアプリ内のレビュー機能では99.1%の満足率を獲得していました。
アプリ内にレビューを書ける機能もあり、以下のようなお声を数多く頂いていました。
全てのシステムを内製していたこと
Meshは注文アプリ📲 、配達アプリ📲、ピッキングアプリ📲、管理画面 🖥️といったインターフェースだけでなく、裏側の在庫管理システム・CRM・配達システムなど、事業のコアとなるシステムを全てフルタイムエンジニア3名・副業エンジニア2名で作り切りました。適切な設計により、アジリティの高さ・スケーラビリティがありつつも堅牢なシステムとなっていたことも高く評価されました。
重大なインシデントがゼロであったこと
QA(品質管理)のスペシャリストをチームに迎え、入念なバグの潰し込みなどを通じてソフトウェアの品質を高めていました。サービス監視の仕組みも整備し、異常が起きた時にはすぐに対応できる体制も整えていました。その結果、サービス運営期間中にサービスダウンなど重大なインシデントは一度も起こりませんでした。
結果として事業が確実に伸びていたこと
売上は月次で140%ほど伸びていました。売上を構成する注文数・カート単価も伸びており、それ以外の重要KPIであるリテンションレートやCACなども良い水準を保てていました。このように各種KPIをウォッチ・管理しながら事業を伸ばしたことも評価された点でした。
このように複数の会社から評価していただき、買収のお声がけを頂いたことは大変ありがたかったですが、結局会社を売ることはありませんでした。Meshとしては、やはり自分たちで事業を作っていきたいという気持ちを捨てきれなかったためです。
開発会社へのピボット
さまざまな会社からの企画・開発の依頼。そしてピボット
Meshのアプリや事業を見られたさまざまな会社から「うちの事業の企画をしてほしい」、「システム開発をしてほしい」という依頼を頂くようになりました。中にはコンビニのローソンさまなど、誰もが知るような企業からの依頼もありました。コンサルティングや開発をするなかで「ここまで事業を理解してくれたシステム会社は初めて」、「業務にピタッとはまるシステムがこれだけ早くできて、本当に助かった」といったお言葉を頂けるようになり、クライアントが抱えている課題を適切に解いていくことに楽しみや意義を見出すようになり、システム開発事業へピボットする決断をしました。
スタートアップマインドと事業運営経験を持った開発会社
正直に書くと、私たちはいずれまた、スタートアップとして自分たちの事業に挑戦したいと思っています。そのために今は、我々の企画力や開発力を活かしてクライアントの皆さんと一緒に実在する課題を解き、世の中に残る本当の課題・イシューを探索することに決めました。
やると決めたからには、誠心誠意・一生懸命取り組みます。このブログを読まれて「システムの企画や開発に関する相談をしてみたい」と思われた方は、ぜひお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。
自分たちで事業を回して学んだことは、「事業や現場を深く理解できて初めていいソフトウェアを開発できる」ということでした。そして、事業立ち上げ & 全システム内製の実績があるMeshだからこそ、課題に深く入り込み、事業に貢献できるソフトウェアを作れると信じています。
なぜMeshと一緒にやるのか?
Meshは一言でいうと「元スタートアップのブティック系の開発会社」です。前述のとおり全て自社開発でコンシューマープロダクトに徹底的に向き合った過去があり、その実績やM&A時の評価からも以下のような特徴があると言えると思います:
- 技術的に難易度が高い開発も行えること
- 開発期間が短いこと
- セキュリティが堅牢であること
- ユーザー体験が良いこと
また、最近は特にAIに力を入れており、国際会議に論文が何本も採択されているAI研究員3人を顧問として迎え、研究レベルでAIの最新情報を常にキャッチアップし、AIを組み込んだソフトウェアやAIエージェントの開発も行っています。
ダークストア事業はクローズしましたが、事業立ち上げ・運営の経験は開発の仕事にも強く活きています。今後、弊社ブログでは、Meshのシステム開発の拘りやAI活用の考え方など、私たちが現場で学んできたことをシェアしていければと思います。
AIを活用したい・ソフトウェアを導入したいと考えられている方は、以下よりお気軽にお問い合わせください!
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